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彫刻家 『佐藤 保』 インタビュー
佐藤保は、福島県二本松市にある「鈴石」の出身。この地域は今でも自然が多く残る地域だが、彼も子供の頃から野山を駆け回り、釣りを楽しみ、その自然を絵に残したり釣り具や遊び道具を自分で作ったりという生活を送っていた。そんな環境の中で、彼の芸術性の礎が築かれていった。

1960年代に上京し、画家である「島田澄也」に師事。その後作家として独立し、株式会社サンク・アールの創業メンバーとなる。サンク・アールは設立当時から主に「造形美術」の分野に秀でていたが、彼も1980年代から映画関連の仕事に従事、世田谷の東宝撮影所内において、主に彫刻製作を担当していた。

彫刻家
彫刻家 佐藤 保
当時日本では東宝撮影所の全盛期。初代ウルトラマンやバルタン星人を製作したのも佐藤さん達スタッフだった。東宝撮影所とともに全盛期を迎えていた円谷プロダクションとは二人三脚でその後多くの作品を産み出していく。
「日本の特撮技術の祖」と言われる円谷プロの手伝いができれば、という強い思いも佐藤さんにはあったようだ。
その他にも、今の佐藤さんに大きな影響を与えたものが東宝撮影所にはたくさんあった。
当時の東宝撮影所は毎月5本くらい並行して映画を撮影していた。黒澤明監督の映画の美術も手伝ったことがある。黒澤監督はじめ、名監督達や名作品とじかに触れ合うことができたことも大きな影響の一つになる。

1990年には円谷プロダクションが香港で製作した「香港版キングコング」で美術造形監督として参加。3ヶ月間を香港で過ごした。日本とは違い、すべてを自分発信で作り上げていかなければならないプレッシャーもあったが、自分なりの思いをストレートに表現できたはじめての作品になった。
また、香港のスタッフたちに「特撮技術」をはじめて伝えたのも佐藤さん達であり、現在の香港や中国の映画にもおおきな影響を与えている。

1990年代後半からは、テレビCMの美術デザインも手掛けるようになる。この時代の代表作は当時の「東京海上火災」のCM。日本のCMで一番権威のある「ACC賞」を受賞した。数年間シリーズ化され、そのすべてを佐藤さんが手がけた。

彫刻家2 造形作家として順風満帆な人生を歩んできた佐藤さんに転機がおとづれたのは2001年のこと。

大きな病気を患い「芸術家として自分の作品を残していきたい」と思うようになる。映画もテレビCMも、撮影が終了すればほとんどが解体され、消滅してしまうからだ。 自宅のアトリエでは、今まで集めてきた流木でいくつか作品を作っていたので、これを機に本格的に作品を創り始めた。芸術家として創作する以上、人々の心に触れる作品をつくりたい。それが、本格的な「魚流庵」の作家としての出発になった。
なぜ、深山渓谷の流木にこだわりを持っているのか。なぜ、岩魚や山女などの魚を彫りこんでいるのか。
昔から彼は、自然の神秘に惹かれ深山渓谷に通い続けていた。特にお気に入りの場所が「白神山地」である。現在は自然遺産に登録されており、勝手に入ることができないが、20数年前は毎年のように白神山地をおとづれ、そこを流れる「赤石川」の流木を採取していた。白神山地は一歩足を踏み入れるだけで空気が変わり、手つかずの自然が生命力をたぎらせているのを感じたそうだ。原生林と川の力強さ、ブナの木から流れ落ちるしずくを口に含んだときのあの味を、忘れることはできなかった。

大病を患ってからはさらにその神秘性に大きなものを感じるようになった。赤石川の滝登りをする「岩魚」や「山女」の強い生命力にも今までとは違う魅力を感じるようになる。

不思議なことに、白神山地の魂が入った流木に生命力の象徴のような「岩魚」などの魚を彫りこみ、白神の自然を彩色することによって身体に活力がよみがえり、すっかり元気を取り戻したのを感じたのもこの頃からであり、新たなパワーが生まれてきた。基本的に流木は枯れているものだが、そこに生命的な「岩魚」を彫りこむことによって新たな生命が生まれてくる楽しさも感じた。

「神の息吹をもった流木」と「生命力の象徴である岩魚」この2つこそが「魚流庵」たらしめるものであり、深山渓谷の流木や岩魚・山女にこだわる理由である。

現在は白神山地に行くことはできないので、すべて彼の頭の中に残る白神山地や赤石川の残像で作品を作っている。リアルでない部分もより「神秘性」を感じさせる要因になっているのかもしれない。 流木は重いもので40kg 近いものもある。また、枯れ木ほど硬いという性質もあるし、種類によっても様々だ。ブナ、ケヤキ、ナラ、ヒノキなど、いつも掘るごとに新しい発見があるのも作品を作る楽しみの一つだ。
今でも日本各地の渓谷に行き、流木を集めているが、必ず奥様をパートナーとして伴っている。大好きな釣りへ行くのも奥様と一緒だという。
二人の息子さんも彼とおなじ造形やTVCMの世界で活躍してしており、家族全員が芸術一家になった。
現在自宅とサンク・アール内二か所にアトリエを持ち、製作に励んでいる。 たまの休みには3歳と7歳の孫を連れて美術館めぐりをするのが楽しみだという。

なかのひと